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東京高等裁判所 昭和24年(新を)3092号 判決 1950年6月19日

被告人

仙波淸

主文

原判決を破棄する。

本件を宇都宮地方裁判所に差戻す。

理由

弁護人倉田雅充の控訴趣意第三点について。

原審裁判長が本件公訴事実について檢察官の起訴状朗読後その立証に入るに先立つて、被告人の家族関係、前歴、犯行の動機、犯罪の実行、犯罪後の行動等について被告人を訊問していることは原審公判調書によつて明白である。斯かる場合において被告人が犯行を自白することは多くの場合に考えられるが、そうなれば犯罪事実に関する他の証拠が取り調べられない前に、被告人の自白が裁判官の耳に入り、そのために裁判官に事件についての予断をいだかせる可能性を生ずる。されば原審における前示訴訟手続は、刑事訴訟法第三百一條の趣旨に反するばかりでなく、延いては刑事訴訟法が旧刑事訴訟法における被告人訊問の制度を廃止して、第二百九十一條及び第二百九十二條の規定を設けた精神にも反する。從つて原審の右措置は違法であり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

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